「邪魔するぞ・・・・さす・・ん?? 」
 
縁側から言葉通り邪魔をした小十郎が見たものは、母親とその胸元で丸くなっている子供の熟睡している姿だった。
小十郎が肩に担いだ籠には、先程取ってきたばかりの野菜達がゴロゴロと詰まっており、それを『お裾分け』すべく佐助と幸村の住まう屋敷にやって来たのだ。
勿論、小さな政宗も一緒に。
その政宗を勝手知ったるこの屋敷へと上げ、小十郎も上がり込んだ。
畳の青い香りが風に乗り鼻腔を擽る。
二人を起こしてしまわないように、小十郎と政宗は静かにソロリソロリと近付いた。
本当に熟睡してしまっているのだろう、佐助の穏やかな寝顔に『忍としては失格だ』と心の中だけで呟いた小十郎は、喉を鳴らすだけの小さな笑みを零す。
政宗の方はと言うと、丸くなりスゥスゥと寝息を立てている幸村の柔らかな頬を指先で突いて悪戯をしていた。
 
「政宗様、起こしては可哀想でございますよ」
 
「ゆきは、これしきではおきないぞ」
 
「・・・・それもそうでございますね」
 
その言葉に口元を掌で少し隠した小十郎は、苦笑した。
本当にそうなのである。
ちょっとやそっとでは起きない幸村の髪を梳き、その愛らしい寝顔に微笑む。
 
「こじゅうろう、さわるな!! 」
 
パシ、と幸村に触れている小十郎の手を払いのけた政宗は、自分よりも数段大きい佐助を必死で幸村から離すと、その間に割って入り未だ醒めぬ幸村と向かい合うようにして寝転んでしまう。
そして、その小さな手で幸村を抱きしめると・・・・そのまま眠りの途へ着いてしまったのだ。
 
「独占欲の強いお人だ、政宗様は」
 
幼子には到底理解出来ない難しい言葉で政宗を称した小十郎は、三人の寝顔を穏やかな笑顔を浮かべ見つめていた。
差し込む陽の光が、室内をポカポカとした暖かさで満たされいく。
 
「では、俺も参加させて貰おうかな・・・・」
 
この状態で一人残されるのは些か置いてきぼりを食らってしまった気分だと、出遅れた小十郎は欠伸を一つ噛み殺す。
そして、幼子二人を真ん中に。
熟睡している佐助の対極に陣取りゴロリと畳の上に寝転んだ小十郎もまた、目を閉じ、深く深い眠りへと誘われていくのであった。
 
 

おやすみ/20071125