大好きな君への贈り物。
心を込めて選びましょう。
君の喜ぶ顔が見たくて。
ドキドキしながら選びましょう。



見つけましょう、君への贈り物。




***





「旦那、廊下走ったらお仕置きだって言ったでしょ!! 」

遠くから地鳴りのような……
廊下を走るな!と、あれほど言い付けているにも関わらず、小さな可愛い幸村は『知らない、関係ない』と言うように足音を響かせ元気良く廊下を駆けてくる。
そして、大好きな佐助の姿を見付けた幸村は、大きな声で大好きな人の名を呼んだ。



ばたばたばたばた……



「さーすーけーっ!! 」

「かーっ! 廊下は走らない!! って旦那、約束したでしょーっ!! 」

「でもーっ……」

「でも、じゃありませんっ!! 」

めっ、と眉間に皺寄せた佐助は、ふにふに、と柔らかい幸村の頬を軽く抓ってお仕置きをする。
抓られた幸村は、むーっ、と膨れっ面をして佐助を睨み付けていた。
優しい佐助に叱られて少し拗ねた幸村に『けじめはケジメ』と、何時もなら折れてしまう佐助も今回ばかりは可愛い幸村の為にと表情は崩さなかった。

「旦那、ごめんなさい、は!? 」

「ぶーっ」

「……あ、そう……ふーん。そ−言う事するんだ……」

幸村の可愛くない態度に佐助も奥の手に出る。
にや、と。
口の端だけを上げ、全く笑っていない目を細めると、

「旦那……おやつ無し」

幸村の可愛く大きな瞳を見据え言い放ち、くるり、と背を向けて佐助は立ち去った。
びくり、と。
猫の子が驚いて毛を逆立てるように幸村は、一房だけ伸ばし束ねられた毛の先がピン、と張り、佐助の『おっかない顔』を見た所為で小さな身体をふるふる、と震わせていた。




「さーて、旦那はどーするかなぁ〜」

廊下の角を曲がり佐助は、ほくそ笑む。
壁の影からそっ、と顔を覗かせ幸村の様子を伺えば、唇を噛み締め着物の袖を掴み、泣くか泣かないかの瀬戸際な表情をして廊下の真ん中でポツン、と立ち尽くしていた。
暫くして。
萎れた花のようにくったりと頭を垂れていた幸村は、曲がり角に忍んだ佐助の方へと歩き始める。

「やばっ!!」

佐助は、足音を立てずにその場から離れ、おやつが用意されている部屋へと逃げて行った。




***




「……さ、さすけ……」

「んー?」

背中に幸村の刺すような視線を一身に受けながらも佐助は、幸村を振り返りもせず背中を向けたまま素っ気ない返事をした。
囲炉裏端で何かをしている佐助に、自分が仕出かしたことで怒り相手にして貰えず半分ベソをかいている幸村は、冷たいその返事に泣きそうになりながらも涙を堪えている。
そして、可愛らしい足音をさせて幸村は、佐助に近づき大きな背中にぎゅ、としがみついた。

「さすけぇ……」

自分に振り向いて貰えず、構って貰えず……淋しくて寂しくて仕方ない、と。
佐助の着物を小さな手でしっかりと握り締めた幸村は、

「……ごめんなさい……」

本当に小さな声で自分の仕出かした事を佐助に詫びる。

「もうしない? 」

そう佐助が幸村に問えば、背中に擦り付けている顔を縦に振り『うん』と言葉を続ける。
しがみついている幸村を背中から引きはがした佐助は、自分の膝の上に座らせると幸村を背中から抱き締め腕の中に収めてしまう。少し癖のある、ほんのりと紅い栗色した髪に顔を埋め、

「よく出来ました。次は気をつけようね〜」

先程見せていた素っ気なさや恐さを何処かへ隠した佐助は、謝った幸村に穏やかな口調で褒めてやり、何時もの優しい『佐助』へと戻る。

「うんっ!! 」

「がっ!! 急に頭振らないでよ……頭突き喰らったでしょ」

恐さの消えさ佐助が嬉しくて幸村は喜び、頭を勢い良く上下させてしまう。
幸村の、見事なまでに華麗な動きの頭突きを顎に喰らった佐助は、いたた、と涙を浮かべ当たった箇所を撫でていた。
そして、素直に謝った幸村へ『ご褒美』と、囲炉裏端で焼いていた餅を小さな手に乗せてやる。
少し未だ熱かったか。
手で軽く叩き、息を吹き掛け餅を冷まして行くと、がぶ、と小さな口をいっぱいに開けてそれを頬張っていた。
その様が可愛らしくて暫く見つめていた佐助は、ふと、事の発端を思い出す。

「で、俺様に何か用でもあったの? 」

「あっ!! 」

はふはふ、と暖かい焼き餅を食べていた幸村も思い出したようで、佐助への用件を餅は頬張ったまま話し始める。

「んとね。まさむねどのが『ばれんたいんに、ゆきはなにもくれないのか? 』といわれたのだ」

それで佐助に『バレンタインとは何ぞや?? 何をどうすれば良いのか?? 』と言う話をする為に幸村は、廊下を全力疾走していたのだった。

「またチビ宗の仕業かーっ!! 」

チビ宗が余計な事を言わなければ……旦那は廊下を走らずに済んで、俺様に叱られなくて済んだんだ、と。
膝に抱えた幸村がびっくりする程の大声を出した佐助は、此処には居ない小さな政宗に向けて説教をし始めるのだった。





贈/20080221



おそばせながらのバレンタインネタ in チビ。

この時代に「ばれんたいん」があったか等というツッコミは結構で・・・ござる。苦笑。

チビ幸の可愛さは当社比1.5倍以上を醸し出した感が・・・結構可愛く書きました、頑張って。
ぶーたれた幸村は、書いていて楽しかったです。同時にニヤニヤニヤニヤしていたバカです。
ぶーたれても何してても、君は可愛いねぇ・・・ホントに♪
佐助お母様は、相も変わらず勝手に好き放題動いてくれるので・・・ごっつ楽しいです。

そして、おっかしいなぁ・・・天雪さん、政宗様好きでしょ??
ネタですよ、ネタ・・・チビ宗。
この子の位置が「確定」してしまった瞬間かも。
私、小十郎お母様の「極殺」喰らうんじゃねぇの?! と密かに思っています。

喰らってあげるわよ、この子達、書かせてくれんだったら!!!!!

ホントにチビ・・・大好きです。←本気でヤバいです、天雪。


ある御方に・・・強引に押し付けました。えへ。
ドキドキもんでしたが・・・受けて頂けて良かったです。涙。
展示してしまって・・・申し訳御座いせぬぅぅぅ!!!