しんしんしん。
しんしんしん。


しろいしろい、ゆきがふるふる。
たくさんのしあわせをはこんでくる









「ゆきっ、おきろ!!」


幸村よりも随分と早く目を醒ましていた政宗は、早く外へと行きたくて寝坊をしているその身体を揺さぶった。



☆☆☆



昨日は、幸村と佐助が政宗と小十郎の住まう屋敷へと遊びに来ていた。
夜遅くまではしゃぎ遊んでいた子供達は、すっかり眠り込んでしまい屋敷へ泊まる事になった。
母親達は、二人を同じ布団に寝かし付け可愛い寝顔に笑いかけると、室から離れていった。


政宗と幸村が仲良く眠ってしまっている、頃。


空から白い粒が降り落ちて来た。

雪。

ふわりふわりと舞い落ちては、辺り一面を白い白い色で埋めつくしていった。


そして、降り積もった雪が太陽の光を浴びてキラキラし始めた頃、政宗は目を醒まし庭の様子に喜んだ。


早く雪で遊びたいと、幸村と一緒に遊びたいと。


未だ夢の中にいる幸村を布団に残し、政宗は身支度を整えるために小十郎の元へと走っていった。
幸村は、相変わらずすやすやと丸くなり眠っている。起こしてしまうのは可哀相だと、もうすぐ起きてくるだろうと政宗は思い、室から飛び出す。







「こじゅうろう、そとであそんでもよいか?」

「雪遊びをなされますか、政宗様」

うん、と。
首を縦に振った政宗に綿入りの丹前を着せた小十郎は、風邪を引かぬようにと寒さ対策をさせるのだった。そこへ佐助が現れ、幸村が居ないことを政宗に問う。
「ゆきは、まだねている……はやくあそびたいのだが」

「じゃ、起こしに行こうか〜」

「いいのか?」

「せっかく雪積もったんだしね〜みんなで遊ぼうよ、ね、片倉さん」

「……俺もか?」

「当たり前でしょ!!参加しないなら…雪だるまに埋めてやるんだから」

佐助が政宗の手を引き幸村の居る室に向かおうとした時、政宗は開いた手で小十郎の袴を引っ張った。
雪遊びの参加に渋っている小十郎に政宗は、少し寂しそうな声で言う。

「はやく………こじゅうろう」

一緒が良いのだと、素直に言えない政宗が必死で小十郎に伝えた言葉。

「申し訳ございません、政宗様…ご一緒致します」

「…うんっ、はやくいこう!!ゆきをおこしてあそぶぞ!!」

「はいっ、決まり決まり〜!うちの旦那…起こして遊ぼうっ!!」

小十郎は政宗を抱き上げ佐助を先頭に室へと向かい中を覗き見れば、眠り丸くなる幸村の姿があった。

「相変わらずネボスケだな」

「うちの旦那は、そーいう所が可愛いから良いの…ほら、竜の旦那…起こして来てよ

障子の向こうから政宗の、幸村を起こす様を佐助と小十郎はコッソリと見つめ、小さく笑うのだった。

トテトテと、幸村の眠る布団に近付き揺さぶり起こす政宗。
暫くは目覚めずにいた幸村も、大声で自分を呼ぶ声と揺すられる身体に……小さく唸りながら目を擦り、その身体を起こしたのだった。

「ゆき、おはよう」

「う〜…おはようございま…す…まさむね…ど……の…」

もう今にも寝てしまいそうな幸村の返事に政宗は、強行手段に出た。
室を飛び出し庭へ下りると降り積もった雪をかき集め……雪玉を作った政宗は、それを幸村目掛けて投げ付けたのだ。

「ちょ、ちょっとーっ!!旦那、避けてっっ!!」

「ま、政宗様っ!!」


……べしゃ……

見事に雪玉は、幸村の顔面に命中。
泣き出すかとハラハラしていた佐助と小十郎をよそに幸村は、

「なにをなさいますかっ、まさむねどのっ!!」

何かのスイッチが入ったか、寝起きでポヤポヤとしていた筈がスクッと立ち上がり寝間着のまま雪原と化した庭に飛び出したのだ。

「そうでなくては、ゆき!!やるかっ!!」

「のぞむところですっ!まけませぬっ!!」

距離を置いて対峙する政宗と幸村。
睨み合い互いを牽制しながらしゃがみ込むと、足元の雪をかき集め…雪玉を作り……


闘いの火ぶたが切って落とされた。


雪玉を作っては投げ、投げては作りと雪合戦が始まったのだ。
それを見ていた佐助は、大慌てで丹前を持って幸村に着せようと近づいた瞬間、
「じゃまするなっ!!」

「邪魔じゃないでしょ!!旦那風邪引くじゃ…ぶっ!!」

政宗は雪玉を佐助命中させたのだ。
佐助もスイッチが入ったか…幸村に手早く丹前を羽織らせると、大人げなく小さな政宗に雪玉を投げ始める。

「佐助、止めないか……」
「あったま来た!!今日と言う今日はお仕置きだかんね!!片倉さん、邪魔だよ!!

「………さ、佐助…テメェ……」

言葉の後に小十郎目掛けて雪玉を投げ付けた佐助は、その小十郎に視線を投げる事なく幸村と一緒に政宗を攻撃している。
勿論、投げられたものは小十郎に命中したものだから……一番冷静であるはずの小十郎までスイッチが入ってしまい、

「政宗様、あなた様の背中は私が護ります!」

「こじゅうろう、いくぞ!!」

と伊達家は結束し、

「旦那、俺様お仕事頑張るからね〜!」

「うむ、まいるぞ、さすけ!!」

真田家も結束し……







双方力尽きるまで、飽く事なく雪合戦を繰り広げるのだった。






そして。

四人揃って風邪を引いたのは…言うまでもなかった。





雪合戦/20071225