もうそこまで新しい年が近づいていた。
此処は、真田幸村と猿飛佐助の住まう屋敷。
年の瀬を、そして、真新しい年を彼らと一緒に迎えようすべく、この屋敷に押しかけ
「あのね、俺様は真田の旦那とね・・・・静かに年越しをしようとしていたのに、何
只今、年越し準備も終わり深夜、真新しい年を近くのお社で鐘の音を耳にしながら可
本当は子供が起きていてはいけない時刻に今日だけ『特別』だからと、新たな気持ち
正直、今日の伊達家は『迷惑だ』と心中絶叫している佐助。その迷惑加減を小十郎に
迷惑がられていることに苦笑している小十郎は、政宗を勝手知ったる真田家の、幸村
「今暫く・・・・お休みくださいませ、政宗様」
欠伸をしている政宗を幸村と一緒に休ませ静かに寝所を後にした。
出てくるとそこには佐助が、不機嫌極まりない表情で腕を組み仁王立ちをしている。
「年越してもテメェや幸村に世話になるんだ。今日も・・・・一緒でも良いだろう?
「・・・・邪魔だよ、勝手だよ」
表情を崩すことなくブツブツと愚痴を零す佐助は、肩に乗せられた手を払うとその場
直ぐにその背を追う小十郎は、横に並ぶと『ほらよ』と風呂敷包みを佐助に手渡した
突然、渡された風呂敷包みに驚いた佐助は足を止めていまい、手の中の物と横をすり
「何?! 」
「これから詣でだ。新しい物が必要だろう」
台所借りるぜ、と佐助に言い残した小十郎は、蕎麦に入れようと持参した野菜の下拵
一人、廊下の真ん中で立ち尽くしていた佐助は、手渡された風呂敷包みをさら、と開
「かったくらの旦那ーっ!! 」
その包みをしっかりと抱き締めると大声立てて台所へと掛けていく佐助だった。
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ばたばたばた、と足音が徐々に大きくなり響き聞こえる台所にて、小十郎は包丁を手
がたがたがた、と台所へと通じる引き戸を勢い良く開いた佐助は、小十郎が手にして
「ぐっ!! 」
「ありがとう、片倉さん」
「あのな、礼を言うのは良いが・・・・普通に言え、普通に」
へら、と破顔して碧色した暖かそうな襟巻きを首に巻きつけた佐助は、ひらひらと小
その様子を横目で見ると小十郎は、『判ったから手伝え』と一つ、また一つと大根を
「嫌だね。蕎麦は俺様と真田の旦那の分しか無いんだから、その野菜達も片倉さんの
捨て台詞のように手を休めない小十郎に言い放つと佐助は、台所から退散し可愛い幸
「馬鹿が。2人分にしちゃ・・・・多すぎだぜ」
ざるに盛られた蕎麦の山を見、溜息を零した小十郎は台所仕事に勤しみ、そしてこの
*****
「旦那、そろそろ起きようね・・・・お蕎麦食べてお参り行くよ」
「う・・・・ん・・・・さす、けぇ・・・・」
「こっちも起こさないと駄目、だよね・・・・はぁ」
幸村には手加減して揺さぶり起こしていた佐助は、政宗になると容赦なく身体を揺す
そこまでされても動じないのか、ある意味鈍感なのか政宗は、幸村の様に愚図ること
行き先は見えている、と政宗の様子を目で追っていただけの佐助は、政宗のように一
未だうつうつ、としている幸村の手を引き、誰かが一人奮闘している場所へと連れ立
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「で、何で蕎麦が四人分なのさ? 」
「言わねぇと判らねぇのか」
「いーえいーえ、此処で居座ってちゃっかり食べてるんだから、判ってますよ・・・
「悪いな、佐助」
「食べる前に礼、言ってくんない? 」
膳の上、鉢に入った暖かな湯気の上がる蕎麦を食べている四人は、美味しそうな音を
幸村と政宗は、常であれば熟睡している時刻だというのに、起きていても怒られずに
そして、更に。
これからお社に行くのだと聞かされている所為もあり、お出かけする事も楽しくて元
蕎麦も食べ終え、もうすぐ子〈ね〉の刻になると。
小十郎の一声で、お社へと向かう為に屋敷に設えられている土間へと行く四人の姿。
幸村と佐助が手にしている草履と首にある襟巻きのように、政宗と小十郎も真新しい
「ほら、草履だしな」
板張りの上、個々に草履を出すようにと手を差し出す小十郎に一人、また一人と手渡
佐助と己の草履にも施し、そして、屋敷を後に・・・・お社へ向かう路を歩き始めた
幸村と政宗は互いに手を繋ぎ、政宗の持つ灯籠を頼りに夜な夜なの路を行く。辺りが
その小さな背中を追う佐助と小十郎は、互いに持つ灯籠を掲げると、子供達を見失わ
お社へ近付くに連れ人もちらりほらりと増え始め、灯籠の灯りも次第に増えて行くと
「あ、鐘が・・・・」
歩いている内に子の刻が過ぎたのだろう。
もう直ぐ傍まで来ているお社から除夜の鐘が打たれ始め、冷たい夜気に染み入るよう
「今年も、宜しくな」
「宜しく、片倉さん。って言うか、あんまり世話掛けないでよね・・・・疲れるから
相変わらずな佐助の物言いに、年が変わっても変わらなくても『変わらない』と小十
「さーすーけーっ、ゆきはあめがたべたいっ!! 」
「こじゅうろう、おれもたべたい!!
」
佐助と小十郎が年始の挨拶を交わしている時、お参り路に並ぶ露店の甘味処の前で幸
「今日は、良いか・・・・」
「仕方あるまい。めでたい日だからな」
「その前に挨拶させなきゃ」
「そうだな」
新年早々これでは先が思いやられると頭を抱えたが、佐助と小十郎は、飴玉をせがみ
新春/20080103