争乱など無い、この世界で。
命を育み、共に生きていきたいと。
願い、そして祈る。
現世〈うつつよ〉も、夢の中も。
 
***

「・・・・どの、・・・・どの!!」
 
緑の大地、柔らかな草原、流れる大気、土の匂い。
小高き丘で、しっかと大地に根を張る大木の幹。
その膝元で幼子が、木漏れ日を受け眠っていた。
蒼き幼子。
その眠りを妨げるかのように、身体を揺さぶり起こそうとする紅き幼子。
孤独にされてしまったのが寂しいのか、悲しいのか。
目覚めて欲しくて呼びかける。
だけど、深く深く眠ってしまっているのだろう。
蒼き幼子は、一向に目覚めず小さな寝息を吐いていた。
 
構って欲しくて、遊んで欲しくて、一緒にいたくて。
 
「・・・・どの、起きて下され・・・・独りにしないで・・・・」

いつの間にか零れていた雫。
着物の袖で、ぐい、と拭った紅き幼子は、起きてはくれぬ蒼き幼子の傍らに寄り添い瞳を閉じる。
同じ様に眠ってしまおう、と。
現世で独りで居るのが嫌だから。
せめて同じ夢でも。
夢の中で一緒に居たいと、願い祈りながら眼前にある蒼い衣を握り締めた。
 

***
 
「あーらら、仲良く寝ちゃってるの」
 
「静かで良いだろう。暫くそっとしておこう」
 
「そーだね・・・・起きてると喧嘩ばっかりして五月蠅いんだから」
 

透き通る風と木漏れ日に包まれて。
蒼と紅の幼子は、穏やかに静かに深く、眠る。
離れまいと、互いに寄り添い眠る、眠る。
同じ夢を見ているのだろう。
幸福な笑みを零し、眠る、眠る、眠る。
 
 
 
 
緑風夢話/20070913