ひとーつ、ふたーつ、みっつ。
空に投げては口を開き、上手く受け止める。
よっつ、いつつ、むっつ。
指で摘んで、びいどろの中。
ななつ、やーっつ、ここのつ、と。
色を選んで、あなたに渡す。
とう。
最後の一つは、誰のもの??
とてもとても甘いお菓子を政宗は、幸村に手渡した。
「これは・・・・金平糖ではござらぬか?! 」
「yes 」
白い半紙に包まれた可愛い色した砂糖菓子、とてもとても貴重な甘味だった。
砂糖というものの流通がほとんど無く、手に出来るのは・・・・ほんの一部の人間だ
しかも、職人が手間と暇を掛けて作る品物。
正直、上納品である。
それが、幸村の手中にあるのだ。
それも、半紙を開けば零れてしまう程の数。
甘味が大好きな幸村でも、これはこれは『高嶺の花』だった。
話には聞いて知っていた、食べてみたいと思っていた、それがそれが・・・・
「どうなさったのでござるか、政宗殿ぉぉぉ!!!
」
「いや、どうもこうも・・・・」
「こっ、この様な貴重な金平糖が・・・・こんなに沢山・・・うぉぉぉ!!!
」
「おっ、落ち着けよ」
「落ち着いておれぬわっ!! 」
両手で抱え持った金平糖をキラキラと輝かせた瞳で見つめ、幸村は子供のようにはし
戦場では『紅蓮の鬼』と言われ名を轟かせている程の男が、この有様である。
その好敵手としての位置を持つ政宗は、一国一城の主と言うだけではないが幸村とは
現すなら『冷』の政宗と『暖』の幸村と。
天真爛漫な幸村の様子に、政宗もこの品物を持参して良かったと心底思った。
政宗が手にしていても食べる訳でもなく、そのまま誰知れず渡ってしまうのであれば
それに・・・・幸村に会う口実が出来る。
政宗は、金平糖を手に奥州から甲斐へと馬を駆り立てたのだった。
後ろから、片倉小十郎が追いかけてきたのは・・・・言うまでもなかった。
「そんなに喜んで貰えたら、奥州から持って来た甲斐あったぜ」
「本当に、本当に・・・・頂いても宜しいのか?? 」
「・・・・アンタさっきから同じ事ばっかり、くどいんだよ」
「しかし、この様な貴重なものを・・・・」
やはり、高嶺の花だと思っている幸村は素直に貰うことが出来ずに愚図っていた。そ
幸村の手の中、白の半紙に色を付けるような淡く可愛い色した金平糖がさらさら、と
手渡しただけでも満面の笑みを浮かべ幸せそうにしていた幸村の、金平糖を食べた時
しかし、なかなかと食べてはくれぬ幸村に当然、政宗は焦れた。
ならばと。
「hey これなら良いだろう? 」
隣で金平糖を手に悩み続けている幸村の目の前、その手に収まる半紙の中から幾つか
かりかり、と音を立て咬み砕いた粒が口の中で広がり、そして甘い甘い砂糖の味が広
政宗は、どちらかというと甘味は苦手であった。が、幸村と会い話す機会が増えるに
量は・・・・笑える程、雲泥の差だったが。
小気味良い音が幸村の耳にも届けられる。食べている政宗の表情を伺い見れば、食べ
小さな粒をそろそろ、と一つ摘んでは恐る恐る口の中へと納める。すると、ぱぁ、と
「お、美味しいでござる!!! 」
「ok しっかり食えよ。全部アンタのもんだ」
「嬉しいでござる、政宗殿ぉぉぉ!!! 」
手の中の金平糖を大切に大切に抱き締めた幸村は、政宗に自然と抱き付いていた。
・・・・後日。
幸村が『金平糖の礼がしたい』と政宗を訪ねていったのだが・・・・
「政宗殿、某に出来ることであれば金平糖の礼がしたいでござる」
「別に・・・・ねぇなぁ」
「そう言われずに、何かござらぬか?? 」
一生懸命強請る幸村は、政宗が考え込めば考え込む程に表情を暗くして行き俯き加減
そんな必死な幸村に・・・・
「hey
幸村」
「なっ、何かござったが?? 」
「ああ、アンタにしか頼めねぇ事だ」
うんうん、と自分にしか頼めないという言葉に酷く酔いしれている幸村は、爛々と瞳
〈コイツ、判ってねぇだろう〉
その表情を魅せるからだ、と心中だけで愚痴た政宗は、幸村の顎に手を掛け顔を上げ
「えっ?! 」
「金平糖の礼は、アンタのこれで・・・・良いぜ」
「・・・・なっ、何と、破廉恥なーっ!!! 」
政宗の意味する事を理解するまでに少々、そして、理解した直後に絶叫する幸村の声
金平糖/20080104