会えない時間と、会えない距離と。
心に募る愛しさが、君の元へと届きますように。





*****




「はぁ」


何か事を起こす度、主は盛大な溜息を吐いていおります。
もう小言を言う気力さえも削がれる程に、それはそれは、何度も何度も、繰り返し繰り返し。
一国一城の主という事をお忘れではございませぬか・・・・と進言したくとも、聞く耳持たずであろう我が主。
溜息ばかりで政務にも身が入らず、主の心は遠くへと飛んでいます。
しかし、私とて国に主に仕える身。
進言せねばなりませぬ。




「政宗様、好い加減になさいませ」

「ah ?! 」

「上の空で政務が全く手つかずでは無いですか」

「仕方ネェだろ、身入らねぇんだからよ」

文机に肘を付き障子の外を遠く遠く眺めては、また溜息を一つ主は溜息を吐きます。
その瞳の先には遙か地の甲斐を映し、唯一人の者を脳裏に想い描いている事でしょう。
憂いの表情を浮かべては、溜息を零し、想い描く者の名を密やかに紡がれております。
その者と刀を交え、言葉を交わし、思いを交わされたのは自然の理だったのかも知れませぬ。
しかし。
越えなければならないお互いの壁が御座いました。
奥州と甲斐。
まして一国一城の主と、主君に仕える武士と。
国を隔て、身分を越えなければなりませぬ。
それでも。
奥州の主・政宗様と、甲斐の武士・真田幸村は互いに想い合う程の仲にございます。
今、奥州と甲斐の間には戦事はなく、平温に過ごし、行き来をしております。
ただ。
直ぐに会える距離でもなし、政宗様は国を治めねばならず・・・・もどかしさで苛々が募っている様子でありました。




「はぁ・・・・会いてぇなぁ」

もう聞き飽きた溜息とその言葉に、私の胃も悲鳴を上げ、眉間に刻まれた皺が更に深さを増していく感じが致しました。
此処数日来、考えに考えた挙げ句・・・・ある者にある事を依頼致しました。
相手方も渋々ではありましたが、どうも同じ目に遭っている様子、今回は致し方無しと依頼を飲んだのでした。



*****





「政宗様、どうしても真田に会いたいのですか? 」

「あったり前だろう、小十郎。これだけ訴えてるのに判らねぇか? 」

やる気の無さが如実に表れている政宗様に、今度は私が溜息を吐きました。

「会って話して勝負してぇな」

それだけでは無いでしょう、と、心此処に在らずの政宗様に知られないよう細心の注意を払い小言を零し、私は言いました。

「では、真田に会えば・・・・政宗様の気も晴れるのですね? 」

「ah ? 気が晴れるどころか、こんなモンだって簡単に片付けてやるぜ」

そう言い放った政宗様は、文机に山となった書簡の束を指差し不敵な笑みを浮かべられました。

「その言葉、二言はございませぬか、政宗様? 」

「of course 」

「判りました・・・・その言葉お忘れ無きよう」

そして、政務と引き替えに・・・・




「片倉さーん、これで良いの?? ホントに連れて来ちゃったけど・・・・ウチの旦那、これじゃ可哀想だよ」

「悪いな、佐助。お前ん所も苦労していたみたいだな」

「そうそう、毎日溜息ばっかりでさ〜疲れるったらありゃしませんでしたよ。だから黙らせて連れて来ちゃった」

政宗様の室の向こう、真田の忍頭・猿飛佐助がいつもの如く飄々とした口調で私に話し掛けてきました。
その後ろには・・・・

「ゆっ、幸村?! 」

「んぐぐぐーっ!!〈政宗殿ーっ!!〉」

暴れないように紐でがんじがらめにされ、挙げ句に黙らせられている真田幸村のあられもない姿がござました。

「と、言う訳です・・・・政宗様。しっかり終わらせて下さいませ」

「ちょ、ちょっと待て!! 」

「待ちませぬ。では、失礼致します」

「頑張ってね〜竜の旦那、お仕事・お仕事♪」

ぴしゃり、と私は政宗様だけを残し襖を締めてしまいました。
甲斐からの客人を・・・・幸村には申し訳ない事をしたと思っておりますが、佐助と共に丁重に持てなしを致しました。
そして、政宗様が室から出て来るのを・・・・客人と待つのでした。








「くっそぉ・・・・あんな手に出るとは思わなかったぜ、小十郎」

こんな事を大声出して言っておられた政宗様は、幸村に一刻でも早く会いたいと・・・・必死で政務をこなされたのでした。






想/20071128







日本語って難しいですーっ!!!
ちょっと変わった視点からチャレンジしてみました。
が、見事玉砕ですってばぁ・・・涙。
小十郎の視点で書くと言葉がエライ事になってしまったです・・・
恥ずかしいけど放置プレー。爆。



筆頭いじりで・・・ゴメン!!!
そして、いっちばん不憫なのが幸殿。重ねてゴメン!!!
ふん縛られて連れてこられて・・・
ちゃんと二人とも、今度は書くからねっ、ねっ!!!



クスリとでも笑って頂ければ良いのですが・・・大丈夫かぁ〜コレ。