はぁ。
はぁぁ。
はぁーっ。
溜息を零す度に『幸せ』は逃げて行くのですよ……政宗様。
・・・・・
長閑な春の陽気に誘われてでしょうか、政宗様の頭の中もすっかり春のご様子です。
室の内より庭先を眺め、うふふ、と言うような緩み切った笑顔をされております。
梅の花を愛で、枝にて羽根を休めている鶯の、未だ幼く可愛らしい初鳴きの声をそっ、と耳に手を添え聞かれているご様子。
この地を治める我が主。
凛々しい姿は何処へやら。
この様な緩んだ姿を他者には見せられまい、私の胸の内だけに留めておか無ければ……と、思うのでありました。
暫く春の陽を堪能し、散々緩んだ顔をされていたかと思えば、今度は難しい顔をし溜息ばかりを吐かれ始めました。
きっと、あの者の事をお思いなのでしょう。
全く。
政宗様、ご自身の立場を理解されておりますか?
お気持ちは察しますが、自重と言う言葉を少しは理解なさいませ。
「政宗様、小難しい顔をして溜息ばかり吐いておられては、欝陶しくて仕方がございません」
欝陶しい、など。
主の政宗様に一番近し所で仕える身の私でも、口にしてはいけないと思いますが、言わずにおれずついつい、口を付いて出てしまいました。
しかし。
政宗様は、私の言葉など一切聞こえていないのでしょう。
文句を言う事なく、答える事なく、気付く事なく溜息を吐き続けておられます。
はぁ。
思わず私も溜息を零してしまいます。
(政宗様のせいですよ。私の……が逃げてしまったら)
しかし。
政宗様の……が逃げてしまうのも心苦しいと思う私は、物申します。
「政宗様、溜息ばかり吐かれすぎです」
「あ……色々思うところがあんだよ。溜息の一つや二つ……」
「何をお考えか察しは付きます。敢えて咎めは致しませんが、溜息を一つ吐く度に『幸せ』が一つ逃げて行くという言葉をご存知ですか?」
「!!!!!」
私の言葉を聞くなり政宗様は、零した溜息を拾い集めるように両手で空を斬られるのでした。
春/20080220
政宗様は、幸村の事を想っているだけで幸せなのでしょう。
すっかり、頭の中が『春』です。
しかし、小十郎の言葉遣い・・・何とかならないかと・・・難しいっっ!!
そして、格納先を悩み・・・伊達真。