珍しいでござるな、政宗殿が……)
今は。
何時も共に在り、共に戦の手綱を握る政宗と幸村は、互いに無防備な姿を曝すことは無かった。
常に相手の内を探り合い、弱みは見せること無く気を張り詰める日常。
戦が終を告げるまでは気を許すこと等、考えられない事だった。
唯一、張り詰めた気を許す刻は、互いの自陣に戻り傍に在る従者の前だけ。
それが。
幸村が先に根を上げて居眠りでもするのではないかと思われがちだが、政宗が先に弱みを握られることとなってしまった。
戦の合間の、ひと時。
この長閑な空気に眠気も誘われてしまったのだろう政宗は、木陰で身体を投げ出し熟睡していた。
(このような寝顔を見せられるとは、余程気を張り詰められていたのであろうな)
政宗の寝顔を見付けた幸村は、共闘が解ければ『敵将』、倒さなければ為らない存在に、音には乗せない労りの声を掛けたのだった。
ひと時/20080308