「んー、今日も良い天気だ!!! 」
薫風流れる春の日の、甘い桜花の香りが佐助の鼻腔を擽る。
大きな深呼吸と共に、新しい風が「春」を体内にも届けてくれる。
「ん??!! 」
いつの間にか佐助の足下に小さな幸村がやって来て、袴の裾を引っ張っていた。
「どーしたの、旦那? 」
幸村の視線に合わせるように腰を下ろした佐助はもう一度、『どうしたの?
』と問うた。
袴を掴んだ手とは逆の手で幸村は、視線を合わせた佐助の髪を引っ張り自分に引き寄せるとその耳元でポツリポツリ、と囁いた。
「・・・・」
そして、蜜色した佐助の髪へ、その耳元にへと。
何処に隠し持っていたのか幸村は、綻んだ桜花を付けた小枝を簪のように挿したのだった。
「ありがとう、旦那」
こう言った佐助は、幸村のフワフワした髪を撫で、自分がして貰ったのと同じ様に桜咲く小枝を挿した。
佐助と幸村は。
顔を見合わせると、春風のように柔らかな微笑みで何時までも笑い合っていた。
春風/20080320